もし、自分が「がん」になったら子どもに話しますか?
これは、とても考えてしまう問題ですね。
そもそも話す必要があるのかまず悩みます。
どんな反応をするのか気になるほか、年齢的な問題や、子どもの精神状態、これからのことなど考えるときりがなく、そして治療には家族の協力が不可欠なので、どうしても話さざるを得ない状況になることが多いです。
今回は私が乳がんになった時の子どもの反応と、何を話したか、何を感じたか、気を付けた点は、ということをお伝えします。
癌になったことを子どもに話すと決心した理由
本当にデリケートな問題で、伝える方もいれば伝えない方もいる。
伝えたときの影響、そして思春期という難しさ。
私は夫と夜遅くまでとことん話し合いました。考えは行ったり来たりで進みませんでしたが、1日考えてやっぱり子どもたちに伝えることにしました。
伝えた理由
* トリプルネガティブでこの先どうなるかわからないこと
* 隠し事をせず、最初から話した方が逆にいいのかもしれない、と感じたから
* ついていい優しい嘘もあるけれど、今回はそんなこと言っていられないと思ったから
話すことで逆に不安にさせてしまうのではないか、戸惑わせるのではないか、という思いは最後の最後までありました。
そして、年齢のことを考えて、子どもたち一人ひとりと話をすることに決めました。
その年齢に合った説明と、子どもたちの性格を考えて言葉を選ぼうと思ったからです。
まず中学生の子どもに「がん」ということを話した
まず、長男に話しました。
「お母さん、乳がんになっちゃって。手術で2週間ぐらい入院するから弟くんのこととかよろしくね」と。
そうしたら
「わかっていたよ。そうだと思った。」
と一言言いました。どうやら、夫とのやりとりや頻繁に病院に行くのを見ていて、
自分なりに調べたようなんです。
そう、今はネットで何でも調べることができます。親があれこれ説明をしなくても子どもはわかっている。それが逆に怖いところですね。
正確な情報をきちんと伝えないと、あれこれ頭の中で考えてしまう、そう思いました。
意外と冷静でしたが、日々いろいろと調べ、ある程度覚悟をしていたのかもしれません。
小学校5年生の子どもに話した場合
弟くんは、なぜ自分がこの場所に呼ばれたのかわからない様子でした。
てっきり何か怒られるのかと思ったみたいです。
「あのね、お母さん胸にがんがあって、少し入院しなくちゃいけないの。入院中はお友達を家に呼ぶことができないから、ちょっと遊ぶの我慢してね」と伝えました。
そのとたん、
「うわー!」
と泣いてしまいました。
今まで私が入院なんてしたことがなかったので、不安に感じたのと、
やはり「がん」という病気が引っかかっていたのかもしれません。
そして弟くんの場合、いわゆるドキュメンタリー番組などが好きで、よく闘病中の方の様子を記録したテレビを見ていました。
自分の身近な人がそうなる、ということは想像ができていなかったのかもしれません。
正直、しまった、と思いましたね。
泣き止んだ後、一言
「切ったら治るんでしょ?病気、治るんだよね?」
とつぶやきました。思わず、
「治るに決まっているじゃない。そのために入院するんだから」と
答えてしまいました。
転移しているかもしれない、ということはとてもじゃないけれど言えなかったです。
弟くんには早すぎたかもしれない。病名は隠しておいた方がよかったのかもしれない。そう思いました。
担任の先生にも癌であることを話し協力してもらう
がん、ということを伝えても特に子どもたちの様子に変わりはありませんでした。
私も普通に生活をしていましたし、いつも通りを心がけていたのもあったのかもしれません。
でも、この時期の子どもはデリケートです。
見た目は普通でも心にどんな影響があるかわからない。そういったリスクはある、と感じました。そのため、担任の先生にも連絡をしました。
小学校の場合、「連絡帳」というものがあって、何か連絡がある時にそこに連絡事項を書き先生に伝えるのですが、
私はあえてその連絡帳を使わずに、「連絡帳を子どもに見られる危険性があるため」あえて封筒に手紙を入れました。
病気のこと、家での様子を書き、もし学校でなにか変化があったら知らせてほしい、と伝えました。もしかしたら学校で何か変化が起きるかもしれない、と感じたからです。
先生からは、いつもと変わらないことをたびたび知らせていただき、大変安心したのを覚えています。
中学生になるとある程度のことを理解する
小学生ではまだわからないことも、中学生になるととたんに理解をしはじめます。私がいろいろ説明をしなくても、いったいどんな手術をするのか、どういった病気なのかということを知っていました。
弟くんのように、泣くことはありません。言葉もいたって冷静です。私との接し方もいつもと変わりませんし、思春期特有の反抗的な態度もしてきます。
「いつもと変わらず生活をする」
ということを、とても大切にしている感じがしました。
この時期になると隠し事をしてはいけない、と思いましたね。
きちんと話してきちんと向き合ってもらい、協力してもらう、ということが大切なのだと学びました。
小学生は「がん」という病名を聞いただけで驚く
いろいろな病気はあっても、「がん」はやはり今も昔も「不治の病」というイメージがあります。そのためか小学生の子どもに伝えた場合、病名に驚いたようにも感じました。
お母さんが入院して家にいない、という思いよりも、
「病気になったお母さんは、どうなるの?」という不安があるのだと思います。
子どもに伝えたとき、「遊ぶの少しガマンしてね」ではなくて、
「お母さんは大丈夫だから少しの間協力してくれる?」と伝えれば良かったと思いました。
親は大丈夫なんだ、という安心感をその時与えればよかったのかも、と。
でも私の中では、大丈夫かどうかわからない状態で無責任な言葉は言えない、という思いもありました。ですので子どもの様子をよく見ながら、ゆっくりと話をすることが大切なのかも、と感じています。
「がん」であることを話した後の子どもの変化
突然泣き出す、夜親から離れない、ということはなかったですが、伝えたばかりの時は、兄は少し神経質になっていて、
「自分の胸もなんだか固い部分があるけれど、これは大丈夫なのか」
と聞いてきたことが2回ほどありました。
弟の方は、忘れようとしている感じがしました。兄がフォローしている様子もあり、もともと仲の良い兄弟ではありましたが、さらに二人でいることが多くなった気がします。
伝えてから2週間を過ぎると、中学生の兄も小学生の弟もいつものように過ごしていることが多かったです。家事に関しても、思ったほど協力的ではありませんでした。
いつもの日常を、いつものように過ごす、という様子でしたね。
私は「がん」であることを話してよかった
子どもの年齢によって異なるとは思うのですが、我が家の場合、中学2年生と小学校5年生という比較的年齢が高い子どもたちだったので、きちんと伝えました。
それぞれいろいろ思いはあるのでしょうけれど、いまだその当時何を思っていたのかは聞いていませんし、彼らも話をしません。ですが、私は、
伝えて良かった、
と感じています。
隠して徐々に変化していく親を見るより、きちんと伝えて頑張っている様子を見て欲しいとも思った、自分自身が子どもの笑顔を守るために頑張ろうと思えた、というのも伝えて良かった理由の一つです。
そして、のちに私が化学療法を始めて体の変化に戸惑っている時、冷静に言葉をかけてくれたのも子どもたちでした。
ただ、小さい子どもだとそういうわけにはいかないと思います。
不安にさせない、ということが大切だと感じたので、もし子どもが幼稚園とか小学校2年生ぐらいだったら私は伝えなかったと思います。もし伝えたとしても、もっと柔らかく、「胸に悪いものがあってね、取ってくるからね。」など比喩的な表現を用いての説明にとどめておいたと思います。
子どもの年齢や精神状態に合わせて話をする、ということが大切になってきますね。